三語組み合わせ作文

当教室の小学生の授業では、物語の創作をすることが多々あります。生徒自身が考えた物語を文章にしていくというわけです。

ただし、何もない状態から思い思いに書かせるということはあまりありません。「三語組み合わせ作文」というものをやることが多くあります。その名の通り、特定の三つの言葉を使って文章を書くという課題です。その三語は、私が選ぶ場合もあれば、生徒自身が選ぶ場合もあります。ランダムな語群から選ぶ場合もあれば、教室で使わせていただいている『10歳までに覚えておきたい ちょっと難しい1000のことば』(福田尚弘著、アーバン出版)というテキストに載っている語句を勉強がてらに用いることもあります。また、「三語組み合わせ」といっても、生徒の調子によっては四語になったり五語になったりもします。でも、一語か二語では簡単すぎるのでやりません。難易度としては三つが一番丁度良い。三という数字はどうも不思議な魅力を持っていますね。

三語使えば良いというものじゃあない

この課題では、読者に不明点を与えないような文章であることを最低限の合格条件にしています。

たとえば、「きつね」「雲」「にげる」という三つの言葉を選んだとしましょう。これらを無理やりつなげて「きつねがにげて雲になった。」なんていう文を作ることもできますね。しかし、これだけでは情報が乏しすぎて、分からないことが多すぎます。〈何からにげたのか〉、〈どうやって雲になったのか〉、そしてそもそも〈どこにいた、どんなきつねなのか〉など、もっと詳しく教えてもらいたいことがたくさんあります。要するに、登場人物や場面をしっかり設定したり、出来事の推移を十分に埋めたりする必要があるわけです。

こうした情報をきちんと考えて補いさえすれば、ある程度しっかりした昔話風の寸話が出来上がるでしょう。少なくとも100字から200字程度の分量になるでしょうか。初めの内はそれで十分です。でも子どもの想像力は計り知れません。慣れてくると、自分の思っている世界をどんどん言葉にできるようになって、原稿用紙一枚を超える分量が苦にならなくなる子がたくさんいます。

文脈を構築するトレーニング

ただ、指定の言葉の組み合わせによっては、なかなか話の筋を通しにくいという場合もあります。よくあるのが、三語の内の二語を使うまでの文脈は良くできたのに、残りの一語を使う場面になるとそれまでとは全く関係のない文脈になってしまう、という失敗です。一つの統一された物語に仕上げることができなかったわけです。

でも、まさにそういう失敗を積み重ねてもらうことが、この課題の狙いです。一見関係がなさそうな語句の間に、生徒たちは苦心して自然な脈絡を考え出さなければなりません。この作業を通じて、筋の通った文脈を構築していく力が鍛えられたり、自分の文章の中にある飛躍や説明不足に気付く目を身に付けたりすることができるのです。

では、この「三語組み合わせ作文」から生まれた作品をご覧いただきましょう。5年生(書いた当時)の生徒が考えたフィクションです。『ちょっと難しい1000のことば』に載っている「断じて」「想定」「自白」という三語が使われていますが、全て文章の終盤に出て来ます。これらを自然に使う文脈を導くために、前半の筋を丹念に組み上げていったことがよく伝わってきます。

文脈構成力から文脈把握力へ

このように、種では創作を通じて文脈を構成する力を養っていきます。そして、これは作文の力を磨くことだけを狙いとしているわけではありません。文章読解の力を伸ばすことにもなっていくでしょう。書くことと読むことは表裏一体の行為ですから、書く技術を磨くことは、同時に、正しく読むためのトレーニングとなるのです。文脈構成を考えながら筋道の通った文章を書く鍛錬を積み重ねることが、ひるがえって確かな文脈把握力を養うことにつながっていきます。

2018年09月24日 | Posted in コラム | | No Comments » 

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