読書感想文になやんでいるあなたへ
暦の上では秋がたちましたが、暑さはまだまだ続きそう。
お子さまがたにおかれては、夏休みの宿題の様子はいかがでしょうか?
読書感想文は終わりましたか?
いやだなーと思いながら手をつけぬままになっている人も多いかもしれませんね。
うちの生徒にも読書感想文はきらいだと言う人、けっこういますよ。もちろん、好きだ、得意だという人もいますが、やはり苦手に思う人の方が多いかな。
生徒の通っている学校によっては、読書感想文か、その他の作文(夏休みの体験について書くものなど)か、あるいは詩や短歌や俳句を作るかを選べるところもあって、この前も、読書感想文はいやだからと俳句作りを選んだ生徒がいました。(でも、実はそちらもそちらで大変なのですけれどね)
もしそういう選択肢があって、あなたがどうしても読書感想文を書けないと思うのなら、無理して書くことはないと思います。だって、読書感想文とは本来、読んだ本について、どうしても言葉にしたいことがあるというときに書くべきものですから。
他人から押し付けられて書くものではないし、それを書くために本を読まなくてはならないなんてこともおかしい。
こんな国語の教室をやっている私ですが、本音はそうなのです。読書感想文は無理して書くものではない。書きたいと思わないなら書かなくてよい。
でも、だからと言って、やりたくない人みんながやらないで済ませられるかと言えばそうではないですね。それが世の中というものです。
では、読書感想文をどうしても書かなければならないというとき、どうしたらよいでしょうか。
どれほど役に立つかはわかりませんが、私から伝えられるアドバイスを2つ、ここに記しておきたいと思います。
① 書いていて楽しくなるような文章を書く
読書感想文を書くことにしたならば、もう腹をくくって、書くことを楽しみましょう。
つまらない、いやだ、と思い続けながら書くのはかえって苦しいものです。心のなかに重い荷物をずっと持ち続けるような感じがして、とちゅうで投げ出したり、てきとうに書いたりしてしまいたくなります。
自分を楽にするためにも、開き直って、楽しんでしまうというのが一つの手なのだと思います。
たとえば、ふだんの作文ではしないような、ちょっと独特な文章にしてみるというのはどうでしょう?
登場人物とあなたとの想像上のインタビューを入れるとか、あなたの文章の読者に向けて本の内容が関わるクイズを出すとか。
遊び心をもって、あなたにしか書けない自由なものを書いてみましょう。
もちろん、遊びすぎてふざけた内容になってはまずいですし、「感想文」だということをわすれて、あなたの感想がぜんぜん見えない文章になってはいけませんが。また、学校の先生方それぞれに書き方のきまりをもうけている場合もあるでしょう。それはしっかり確認しておく必要があります。
でも、そういったことさえ気を付ければ、あとはあなたの自由な発想で取り組めばよいのです。
読書感想文の宿題をあなたにせおわせた大人たちを満足させるのではなく、あなた自身を楽しませることを第一に考えて書いてほしいと思います。
② 「自分自身」をいれよう
次は、どんなことを書いたらよいのかなやんでいる人向けの話です。
そもそも感想を表す言葉が思いうかばないとか、たとえ感想を言葉にできたとしても、どうも同じことばかりを書いているような気がしてこまっている人はいませんか?
感想を表す言葉といえば、「おもしろかった」「楽しかった」「(登場人物の)○○がかわいそうだった」といったものが思い付きますが、そういった言葉を挙げているだけでは、どうもあじけない文章になってしまいます。
また、そういった言葉だけでは、あまり字数をかせげないという欠点もあります。❬おもしろかった❭という思いは、「おもしろかった」という言葉で言い表してしまえばそれで済んでしまうからです。それ以上に言うべきことが思い付かなくなってしまうのですね。
そこで提案したいのが、「自分自身のことを言葉にしていく」ということなのです。
「ん?それって、『おもしろかった』と書くのとどうちがうの?」と思うかもしれませんね。
ちがいは、主語が何になるかにあります。本(あるいはその登場人物)の方が主語になるのか、それともあなた自身が主語になるのかがちがうのです。
「おもしろかった」の主語になるのは「本が」です。これは、要するに、「本がどうだったのか」を言い表す形をとっているわけですね。
これに対して私がおすすめしたいのは、「わたしが」「ぼくが」が主語になるような書き方をするということです。
具体的に言えば、たとえば「物語の続きが気になってずっと読んでいた」とか「声を出して笑ってしまった」とか「主人公の…という言葉でわたしも…をがんばろうと思った」などといったことを書くということです。
また、「ぼくもこの場面と似たことを経験したことがある。それは…」という風に、本に書かれていることに通じるあなた自身の経験を言葉にしてみるのも良いでしょう。
他にもさまざまな書き方や目の付け方があると思いますが、いずれにせよ、いま挙げた例はすべて書き手自身が主語になる表現になっていますね。要するに、「ぼく/わたしがどうしたのか」を述べる形をとっているわけです。
こんな風に「本がどうだったか」よりも「ぼく/わたしがどうしたのか」を書いていく。自分自身のことを言葉にしていくとは、こういう意味なのです。これに重点をおいてみると、きっとあなたの感想文が豊かになっていくと思います。
なお、「おもしろかった」などといった言葉は、実はそれだけでは血の気が通っていない言葉になるおそれがあると私は思っています。
いくら「おもしろかった」と言っても、しらじらしく感じられる可能性があるように思えるのです。「本当にそう思っているの?」とうたぐってしまえるような、どことなく身が入っていない言葉に受け取られ得るような気がします。
それに対して、まさにそのとき自分の身体や表情に何が起こったのかを表す言葉は、説得力や実感を大いに伴っていると思います。そうした言葉を豊かに織りこむことで、「そうか、そんなに君の心にひびいたんだね」と、読み手に納得してもらえる文章になると思うのです。
こういう意味でも、自分自身が主語になるように書くという考えは大切なことなのかなと私は思っています。
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さあ、以上、私から2つアドバイスを書かせていただきました。
8月ももう二週目。ここから9月までは意外にあっという間だと思います。
読書感想文、まだ書けていない人はがんばってくださいね!
(山分大史)