2020年度各学校入試受験生のみなさんへ

明日からいよいよ兵庫県の私立中入試が始まります。また、明日は大学入試センター試験の初日でもあります。いよいよやってきたなーという感慨に私も包まれていますが、受験生諸君の緊張や不安といったら、きっとなみなみならぬものでしょう。どうかみなさん、そんな緊張や不安に負けず、これまでの努力の成果を存分にぶつけてきてください。

試験のことを「自分に用意された最高の晴れ舞台」と思うと良いかもしれません。スポーツでも演劇でもいいのですが、あなたはプロの「パフォーマー」で、あなたの受ける学校の先生方は「観客」だ、そう思ってください。これまでのトレーニングの結晶となる最高の演技を観客に見せる場が、明日からの試験なのです。

見せてやりましょう。魅せつけてやりましょう。明日からの数日はナルシストになっていい。「私のこの答案を見て!最高でしょう!いまこの試験会場にいる誰にもこんな素晴らしい答案は書けないはず!」そんな気持ちで答案用紙を埋めてきてください。(え、選択式やマークシート式のテストなら「素晴らしい答案」もなにもないって?いやそんなことはない。選択式やマークシート式のテストであっても、あなたのその解答選択一つ一つが、「観客」を魅了する無双の稀代の唯一無二のパフォーマンスになり得ると思いましょう。)

ましてや、センター試験は今年の開催でその歴史に幕を閉じる(ことになっている)わけです。これを受ける今年の高校3年生のみなさんと浪人生のみなさんが主役の、なにはともあれ記念碑的な受験年になります。

センター試験の歴史は30年。30年間日本の教育の軸になってきたものなのです。ひいてはこの期間の社会の在り方や人々の価値観の形成にも少なからず関与するものであったはずであり、これが変革されようとしていることの意味はやはり大きい。

だから、今年のセンターを受ける高校3年生のみなさんと浪人生のみなさん、その一人一人が、この歴史に(少なくとも日本の学校教育史には)残る大きな出来事に名を刻むことになるわけです。そんなことを言うのはおおげさすぎるでしょうか。でも、それくらいの感慨を持つのも許されるのではないかと私は思っています。少なくとも当事者である受験生一人一人においては。

なお、来年新しいシステムのもとで大学受験をする高校2年生のみなさんも、この変革の渦中にありますね。そんなの大迷惑だと思っている人も少なくないでしょう。また、もしかしたら高校3年生のみなさんの中にも、暗雲たちこめる新しい大学入試制度の下で受ける状況になるのを避けるため、絶対に浪人しないよう志望校のレベルを落としている人もたくさんいたかもしれません。そういう人たちにとっても、この大学入試改革はやはり大迷惑なものにほかならないでしょう。

今般の大学入試改革については様々な波乱があり、しかもまだまだ収束しそうにありません。学生諸君の心配や腹立ちは察するに難くありません。

ただ、この改革の総体的な功罪(枝葉末節の不備や悪しき動きは別とした)については、簡単に決し得るものではないと考えるべきだと私は思っています。なぜなら、それは模範解答としていまどこかに存在しているのではなく、良くも悪くも、世代を通して織り上げられていくものだろうからです。

だから、ここまで私は、センター試験最終年となる今年が記念すべき年だと書きこそすれ、それが悪いことだとも良いことだとも表現していないのです。もちろん、余計な懸案を抱えさせられている当事者である、ここから1~2年の受験生のみなさんにとっては、自分達だけが不当に被る災厄にほかならないでしょう。現時点での当事者個々人のレベルで見れば、この変革は明らかに「無ければよかったもの」なのだと思います。

でも、社会や世界の在り方を、長期的な未来を踏まえた観点で考えると、本当によくわからない。おそらく、何らかのアクションをとらなければ、将来的にこの国がまずいことにはなるのは確かでしょう。それに対する答えの一つとして現行の大学入試改革という形が正解なのかどうか、それはいま誰も断言できません。

ただ、一つ断言できるのは、この改革を動かすためのしかるべき権力や能力(進めるためのものにせよ、退かせるためのものにせよ、あるいは軌道変更させるためのものにせよ)を持つ大人たちは、当事者である受験生たちの不安と苦労が最小限になるよう仕事をする責任があるということです。残念ながらそういう立場にない小教室の主宰には、彼らがそのように仕事を全うしてくださることを祈ることしかできない。それがもどかしいところです。

話がだいぶそれてしまいました。

センター試験でもあれ、それ以外でもあれ、受験生のみなさん、どうか胸を張って会場に向かってください。特にセンター試験を受ける人は、世の中のややこしいあれやこれやは置いておいて、「わたしセンター試験最後の受験生だったんだ」ということだけできっと後々話のタネになるはずです。そんな境遇を楽しんじゃいましょう。

やるべきことは十分やったでしょう?それならもう、明日の晴れ舞台に立つだけです。

がんばれ!受験生!

(山分大史)

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